おかえりなさい。


沼田が部屋に戻ると、タカヤは少し舌足らずな口調で、いつもそう言った。
まだ、あの声の気配が残っている気がする。


まいったな。


頭の足りない、図体がでかいだけが取り柄のチンピラ。
不思議と、図体の割に邪魔にはならなかったが、たいして優しくしてやったわけでもない。


それでも。


そばに、ただ居てくれるだけの人間。
そんな存在を手に入れたのが、実は初めてだったことを、いまさら、沼田は思い知っていた。