胸にわだかまる苦い思いを噛み殺しながら、沼田はマンションに戻った。

退屈そうに、床に足を投げ出してマンガ雑誌をめくっていたタカヤが、顔を上げる。

その顔に、屈託のない笑みが広がった。


「おかえりなさい」

「タカヤ。おめえ、出て行け」


時間を開けるほど、言いにくくなる気がして、目を合わせた瞬間に沼田はタカヤに言い捨てた。

タカヤが、目を見開く。


「どうして?」

「おめえ、医者の家に泊ったんだってな。そいつが俺のとこに来たんだよ」


座ったままのタカヤの肩に、靴のまま足をかける。


「バカが。おまえから足がついて、パクられるなんざまっぴらだ」