関係ない、という表情を装いながら、内心沼田は驚いていた。


こいつは、犯罪を隠蔽してでも、タカヤを治療したいのか?


「そもそも警察が係わらなければ、当然、薬のルートも辿られることはない。安心して、高谷君を預けてほしいんです」

「何のことを言っているのかわかりませんね」


コカインの怖さは、沼田も知っている。

女を働かせるために、コカインを使うことがある。

薬の効果で、感度も、動きも磨かれた売春婦は、だが半年もすれば、骨が溶けて骨格が崩れ、すぐに歯肉や鼻腔から出血するようになり、いずれ脳出血か心不全で死亡する。

売り物として扱っている以上、怖さを知っていることは当然だ。
知らなければ、自分がおぼれてしまう。

だがタカヤは、沼田が言っても、密かに売り物のコカインを使うようになった。