「俺の同居人が、いえ、同居人って言っても弟みたいなものなんですが。そいつが高谷くんを拾ってきましてね。
一目見て、薬物中毒だってわかったので、俺は警察に届けろ、って言ったんです」

「へえ、そうなんですか。そりゃあ気付かなかった」

「だけどね、同居人が、なんとかできないのかって、俺に詰め寄るんですよ。医者のくせに、助けられないのか、って。
まぁ、それにほだされて、沼田さんに相談に来たっていうわけです」

「相談、って言われてもねぇ。タカヤがどこから薬を手に入れているのか、私は知りませんからねぇ」

のらりくらりと、はぐらかす沼田を、萩がじっと見つめる。
見透かされるような視線に、沼田は苛立つ。

「沼田さん。あなたも知っていると思いますが、覚せい剤、薬物で逮捕されるには、現行犯しかない。
身につけていない限りは、使用しているだけなら中毒患者扱いで、病院でも警察への通報義務はない。……わかっていただけますか?」