タカヤなら、捕まったところでここまで手は伸びないだろう。
そう思って、試しに使ってみたが、数時間後にはタカヤは金魚の数の5倍の一万円札をジーンズのポケットからつかみ出して、沼田に渡した。
「おめぇ、けっこう使えるじゃねぇか」
「夢が見たいやつなんて、いっぱいいるもん」
「よーしよし。いい子だ」
しゃがみこんでいるタカヤの頭を、沼田は上機嫌にガシガシと撫でた。
タカヤが、気持ち良さそうに首をすくめる。
えへへ、と、幸せそうに笑うタカヤに、不思議な気持ちが、わいた。
こいつになら、気を許しても、大丈夫なのかもしれない。
沼田にとって、初めての感覚だった。