蝉がなきはじめた頃。
私達学生の待ちに待った夏休みがやってきた。
夏休み前日の夜。
冷えた麦茶を片手に母親から届いた手紙を読む。
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杏奈へ
久しぶりですね。
元気にしてますか?
いきなりで悪いんですが
杏奈の住んでいる部屋へ
下宿という形で、幼い頃
仲のよかった梨菜ちゃん
が来る事になりました。
夏休みの間だけの事なの
でよろしくお願いします。
母より
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『まーた勝手に決めちゃったんだ…』
お母さんはいつも勝手だ。
お父さんと離婚するのも、新しいお父さんと結婚するのも、私が一人暮らしする事になったのも全部お母さんの勝手。
『梨菜…そういえばそんな子いたなぁ…』
梨菜は私の幼なじみ。
毎日一緒にいた。お泊りもしょっちゅうしてたっけ。
でも、小学校を卒業する頃に梨菜は家族で引越してしまった。
それ以来の連絡は一切ない。
考えるのがめんどくさくなった為、私はとりあえず寝ることにした。