「憎んでる」


あたしが言う前に先に口に出した一輝くんの言葉にうなずくと、一輝くんは表情こそあまり変えなかったけれど、その目に悲しみがうつってるのに気づいて、ほんのすこし胸が痛くなった。

あたしは、一輝くんの悲しそうな顔が苦手だ......。

もうとっくに愛してないはずなのに、それでもこの顔だけはどうしてかダメなんだよ。


「......分かりました。
そんなに俺のことが嫌いなら、もういいです。

だけど、嫌がらせを続ける気なら、俺だって戦うけん。もうこれからは、過去に一度は愛した人だと思わない。

今からはもう、敵だ」


敵だと告げた一輝くんの顔があまりにも悲しくて、言われた言葉に思いの外動揺して、動揺を隠すためにすぐにうつむいた。

自分から嫌いだと言ったはずなのに、一輝くんからはっきりと決別の言葉を聞いて動揺するなんて、どうかしてる。


あたしに背を向けて去っていく一輝くんの背中を見ながら、小さくため息をついた。