「本当の愛なら、心から相手を想っていたら、こんな風に傷つけ合ったりしない」


もしも本当にまだあたしが一輝くんを想っているとしたら、理穂と敦士みたいに、みのると彼女みたいに、笑顔でいられるはず。

あたしと秀みたいに、辛い時は支え合えるはず。


もちろんいつも笑顔でいられるわけもないし、ケンカする時だって、関係が悪くなる時だってあるのは分かってる。


だけど少なくとも、今のあたしと一輝くんみたいに相手への思いやりも敬意もなく、相手を攻撃することしか考えてないのは、きっと愛じゃない。

あたしの未来が秀じゃなかったとしても、少なくとも一輝くんじゃない。


「みどり、」


初めて一輝くんの前で涙を見せたあたしに、彼は戸惑ったような表情をしながらも、そっとあたしの手に触れようとしたけれど、触らないでとその手を振り払い拒絶した。


「一輝くんといると、どんどん嫌な人間になる。弱くなる。強い女でいたいと思うのに、一輝くんといるとそれができない」


こんな風に元カレの前でみっともなく泣いたり、元カレに嫌がらせしたりする人間にはなりたくなかったのに。

今のあたしは、最低だ。
こんなの、あの元カレメガネと同レベルの人間だよ。


「どういう意味ですか」

「分からない......、けど、あたしは一輝くんが好きじゃない。好きどころか、むしろ......」