「グラコン持ってきてないの?」


まだ三時ぐらいで暖かい時間のはずなのに、外は息が白くなるくらいに寒い。

校門のところまで無言で歩いていたみのるは、紺色のジャージしか着てないあたしに声をかけた。


「テスト週間になる前に持って帰ったら、持ってくるの忘れちゃった」


一応冬用の風を通さない素材ではあるけど、この気温はグラコンなしだとやっぱ寒い。


「これ使って。一時間半くらい走るから、それじゃ寒いよ」


自分が着ていたものを脱ぐと、それをあたしに渡そうとするみのる。


「あ、ありがとう?みのるは大丈夫なの?」

「走るとき使わないから。
じゃ、行ってくるね」


遠慮するあたしに半ば強引にグラコンを押しつけると、いきなりスタートを切ったみのるに、あわててストップウォッチのボタンを押す。


「おお!?......いってらっしゃい!」