冬は日が暮れるのが早い。

銀月館みたいな夜間用照明完備、雨天用屋内練習場完備の私立とは違って、予算もないうちにはそんなものはあるわけはなく。

必然的に冬は、ボールを使った練習をできる時間が短くなる。


だから今日みたいな天気もよくて学校も早く終わった日は、絶好の練習日和なんだけど、テスト週間で部活自体久々。

急にやり過ぎるのは良くないから、徐々にならしてかないといけない。みんなは自主練はしてたんだろうけど、全体での練習は一週間ぶりくらいだもん。


部活が始まってから二時間もたつと、バッティングもノックもボールを使った練習は上がって、ボールを使わないトレーニングにうつっていく。


「外周行くからタイム計って」


みのる走りに行くんだ。
野手もだけど、スタミナが大事な投手はもっと走り込まないといけない。オフシーズンの冬はとくに。

あたしを見ながらも、スパイクからトレーニング用の靴に履き替えているみのるから視線をそらし、ボールの片付けをしている理穂の方を見る。


「にっしー」


あたしの方をもう一度見たみのるは、返事をしようとはしないあたしの名前を呼ぶ。

......あたしか、あたしだよね。
最初からあたしの方見てたしね。

やっぱりあたしか。


「え!あ......ああっ!外周。
外周ね、よしいこっ」


ストップウォッチを持って、校門の方まで歩いていく。