「......ごめん」


しばしの気まずすぎる重い空気をまとった時間を過ごしたあと、みのるはうつむいたままでようやく沈黙をやぶった。


「あ、うん、いいけど.......、いや良くないか......。

っていうか、......いつから?」

「けっこう前から。
夏休み入る前には、もう好きだった」


そっか......。

たしかに、一瞬アレ?と思うようなことは、今まで何回かあった。


だけどなんだろ。
みのるは理穂が好きだって思い込んでたから、それはナイだろって思っちゃってたのかも。


「ごめん、今日は帰っていい?
いま冷静に話せる状態じゃない。
勝手なことしといて、本当に申し訳ないんだけど。

大丈夫、逃げたりしないから。
明日までに考えをまとめてくる」


冷静に見えるけど、けっこうテンパってたりするのかな。

全くあたしの方を見てくれないまま、部活のバッグをかついで立ち上がったみのるに、あたしもバッグを手に取る。


「あ、いやいや、うん、だよね。
よし、今日は帰るか。
明日話そ!」


みのるが話せないって言ってんだから、今日のとこは素直に帰ろう。

あたしもちょっとみのるをあおっちゃったみたいなとこあるから、後ろめたいとこもある。


いや後ろめたいってのなら、一輝くんに対してのが後ろめたい。あたしよりもみのるの方が気にしてそうだけど......。

一輝くん、今頃、クラスのみんなと楽しんでるんかな。


はぁ.....、もう、どうしよう。


ひとまずメンドーなことは明日考えることにして、戸締まりをしてから、みのると一緒に部室を出た。