公園に着くと乱れる息を整えながら、ベンチに座る。
握りしめていたスマホから力を抜いて、もう一度画面を見て確かめる。
あの男は来るのだろうか。
こんなに必死になって、自分は何をしているんだろう。
でも、少しだけ、少しだけだから……。
曖昧な想いを載せながら、ベンチに座り続ける。
無機質であんなに役に立たないものだと思っていたスマホをずっと見つめる私を、今までの私が見たら笑われるだろう。
こんな無機質なものにまで振り回されるなんて。
思わず自嘲的な笑みが溢れた。
次節、公園に入ってくる足音にあの男が来たのか、と反応してしまったけれど、全部違ってハアとため息を吐く繰り返し。
嘘を吐いたことだけ気にしてるなら電話で謝ればいい。
なのに、電話だけで済まさないのはまあ…変なプライドが邪魔するっていうのもある。
……けど、あの男の鋭い瞳、低い声。
何より、あの銀色。
最低で最悪なのに、銀色なのに違和感を感じさせないあの綺麗な色が私を捕らえて離れなくて。
深夜の公園にいる私のことを追及もせず、何を聞くわけでもなく、意地悪な笑みを浮かべて笑うアイツの隣は本当はすごく安心できて。
「だからむかつくんだって……」
日が沈み、夜が更けていく。
結局その日、あの男が来ることはなかった。