ハンガーに吊るした、あの雪の日にもらった赤いマフラーが、視界に入って胸の奥深くが揺れた気がした。



貰い物のマフラーを他人に渡す男なのに、


勝手に人のスマホを取る男なのに、


不意打ちでおでこにキスしやがった男なのに、




「むかつく……」



なんでこんなにあの男のことを考えてるんだろう。



こんな気持ちを振り切りたくて、勢い良く体を回転して仰向けにしようとしたら、


ゴトッ



ベッドの横に充電機をさして置いてあったスマホが手に当たって落ちた。



あー、もう……なんて思いながらスマホを拾うと、ちょうど電源ボタンも一緒に押してしまったらしい。



画面が明るくなり、一件の不在着信を知らせるメッセージが表示されていて思わず動きを止めてしまった。



何故かドキドキと高鳴り出した胸を落ち着かせながら、不在着信が誰かを調べてみる。




ただの間違いかもしれない。

公園とは関係ないのかもしれない。



それでも、私は着信元を確認すると、ベッドから起き上がってそのままの勢いで家を出て走り出した。