「……」
「僕の勘違いかもしれないけど、」
真っ直ぐに私を見つめる視線。
「それが本当に勘違いかどうかなんて、聞かないとわからないことだってあるよ」
男にしては高い声が私の鼓膜を揺らす。
「僕はシロじゃないから」
だから聞くんだよ、というように優しく微笑んだ樹里の瞳は相変わらず私を捉えたまま離さない。
「……」
「別に言わなくてもいいよ」
押し黙る私に、目の前の顔がごめんね?と困った感じになる。
「ただ、僕はシロのことちゃんと見てるよってこと言いたかっただけだから」
「……」
樹里は優しいから私のことを無理に聞き出すことはしない。
それをわかっているくせに、そんな樹里に甘えて。
「本当に何でもないから」
そう言って、樹里から視線を逸らした私は最低だ。
そっか、と聞こえた切なそうな声にズキンと胸が痛んだ。
歩み寄ってくれている樹里から逃げる私は
樹里の優しさに甘えている私は
樹里を大切だと思っているのに拒否する私は
どけだけ最低なんだろう。