人集りに行くと樹里の大丈夫、という言葉の意味がすぐにわかった。
樹里に気づいた人達がどんどん道を開けて行く。
その中には樹里に頭を下げる人もいる。
樹里はそんな中をさも当たり前かのように進んで行く。
好奇。尊敬。羨望。好意。嫉妬。
たくさんの視線が樹里を捕らえる。
それは隣にいる私にも当然向けられて。
「誰?」
「ほら、樹里さんが気に入ってる女」
「何なのあの子?」
「樹里君から離れろよ」
コソコソと話し声が聞こえる。
昨日聞いた、LUCEというチームの存在。
それを聞くまでは、樹里といる時に向けられる視線は樹里が魅力的だからなんだろうと思っていた。
そして、樹里は特別な存在で、周りに少しだけ影響を与えているだろうってことも。
でも、LUCEというチームの存在を知った今、自分の考えがどれだけ甘いものだったかを知った。
少しだけ、なんかじゃなかった。
トップの次にいる樹里の存在はすごく特別で、いつだって周りから見られて、勝手なことを言われることは当たり前で。
「何にするー?」
周りからの視線も反応も気にせずにいつもと同じ笑顔で私を見る樹里。
樹里はいつもこんな視線や反応を向けられて平気なんだろうか。
それとも慣れてしまったんだろうか。
少なくとも、そんな樹里と一緒にいることで、周りも私のことを黙っているはずがない。