準備を整えて、最後にスマホを鞄に入れようとしたら、電源が入らなくて、電池がなくなったことを知らせる。
しばらく充電してなかったからか。
『かけたら出ろっつっただろ』
あの男の言葉が脳裏をよぎった。
「……まあ、いっか」
出るか出ないかなんて私の勝手で、あの男のいいなりになるつもりなんて微塵もないんだから。
「……」
誰もいない家。
結局スマホは持たずに、行ってきます、も言わずに家を出た。
____________……
「シロー!遅い!今日はもう来ないのかと思った!」
教室に着くなり、樹里が私に気づいて駆け寄ってきた。
「あいつ学校来たの」
「来んなよ。何、樹里君のことたぶらかしてんの」
そのせいか、女子からの妬みの視線が執拗に届く。
やっぱりそれは、気分が良いものではない。
「んー」
樹里に曖昧な返事をして、席に座る。