「帰ろう…」

俺は一人呟き、帰路につくことにした。

「翔くん!!」

「百合菜ちゃん…?」

病院の門のところには百合菜ちゃんが立っていた

「一緒に帰ろう?」

百合菜ちゃんは頬の色をうっすら染めながら俺に尋ねて来た。

「皆は?」

「あ……あの、帰っちゃったよ?」

「何だよ、冷たいな……」

俺は小さく舌打ちした。。

「しょ……翔君。私と、帰りたくない……かな?迷惑だったかな?」

「そ、そんなことないよ!!行こうか!」

俺達はどこか気まずいまま歩き始めた。百合菜ちゃんが時折、話し掛けてくれるものの俺は紫音のことで頭がいっぱいだった為か、曖昧な返事しか出来なかった。

次第に俺達は言葉を交わさなくなった。俺は何か話題を出そうと思った。

「百合菜ちゃん、紫音って子のことおじいちゃんに聞かなかった?」

しかし、百合菜ちゃんから返事はなかった。不思議に思った俺は、百合菜ちゃんの方を向いた。

「え……百合菜ちゃん?」

「…翔君の…ばか。そんなに紫音大事だったら……その子と帰れば良かったじゃない!」

俺は紫音のことを考えすぎて百合菜ちゃんのことを気にしてやれなかった。  

「翔くんなんて大嫌い。私先に帰るね」

「ちょっと待っ……」

「最後に一言言わせて。この鈍感!!」

それだけ言い残して百合菜ちゃんは走って帰ってしまった。

あの時、俺が百合菜ちゃんを見た時、目に涙が浮かんでたのは……見間違いだっただろうか?

君は、何で泣いたの?