「あのぉ、百合菜ちゃん。今日どこか行きたい所とかってあるかな?」

「……決めてないの?」

もう死にたい気分だった。何故か機嫌が悪い百合菜ちゃんは俺に冷たい目線を送ってくる。

「はい……すみません。だけどこれは渡が……」

「私、言い訳する男って嫌いだな」

き……嫌い?百合菜ちゃんが俺のこと……嫌い?終わった。俺の恋はもう終わったんだ。

「ゆ、百合菜!ちょっと言い過ぎですよ?」

「美紀はやっぱり、翔君の肩持つんだ?」

「別にそんな……」

美紀も言葉に詰まってしまった。何だ?何で百合菜ちゃんはこんなに機嫌が悪いんだ。いつもは、おっとりしてる子なのに……。

『翔、私がデートを成功させる三ヶ条を伝授してあげるよ!』

今日の朝に紫音が俺に口を酸っぱくして言っていたことを俺は思い出す。まずは第一ヶ条だ。

「ゆ、百合菜ちゃん。髪切った?」

「え……?うん、切ったけど」

「似合ってるよ」

俺がそう言うと、百合菜ちゃんはやっと笑ってくれた。

「ありがとう。翔君だってその服、似合ってるよ?」

百合菜ちゃんはそう言った後に美紀にごめんね?とひたすら謝っていた。

『第一ヶ条、会話に困ったら女の子の髪を褒めてみるべし』

紫音、助かったぜ……。ホッとするのもつかの間。俺の右手に紙が握らされた。

『私、今日はあんまり翔さんに話さないようにしますね?また、百合菜に妬かれたら困っちゃいますもん』

筆跡からするに美紀の物だけど、どういう意味だろうか? そして空気を読まない男がついにやってくる。

「みんなお待た……」

全部言い切らないうちに、俺は渡をボコボコにした。理由?そんなのありすぎて分からない。

分かったのは、とりあえずスッキリしたということだ。