「私、今日をすっごく楽しみにしてたんですよ?だから昨日あんまり眠れませんでした……」

ポリポリと頬をかきながら美紀は言う。俺は、緊張のし過ぎで眠れなかったし、朝は紫音に叩き起こされたからな……。

「まあ、今日は楽しもうな?」

「期待してますよ?」

「とは言っても、俺も今日は何処に行こうか聞いてないんだけどな?」

そもそも俺は人数合わせで呼ばれたようなキャラだし、プランとかに口だししない方がいいだろう。

「あれ?渡さんは、翔さんに全部任せたって言ってましたよ?」

「……は?」

「はい。渡さんは細かいこと考えるのが苦手とか何とか言ってました」

開いた口が塞がらないとはこのことだろう。そんな話、俺は初耳だ。

「美紀、俺、何にも考えてないんだけど……」

「え……ホントですか?しっかりして下さいよ。私、翔さんを信用して……」

「ち、が、う!渡がそのことを俺に言ってなかったんだよ!」

興奮していた俺は思わず美紀の肩を掴んでしまった。

「あ、ごめん……」

「いや、大丈夫ですよ……」

しかし美紀は俯いてしまった。やばい、何か妙な雰囲気だぞ。

「あの……二人ともおはよう。朝から、仲いいんだね」

「え、あ……」

今日の運はとことん悪いようだ。美紀の肩を掴んでいるところを百合菜ちゃんに見られてしまった。

「ゆ、百合菜?あの……これは違うんですよ。翔さんが無理矢理……」

「美紀っ!」

俺は慌てて美紀の口を塞いだ。こいつ、どんだけ天然なんだ?

「ふーん……」

Wデート開始5分前。俺ら三人には、どこか険悪な雰囲気が流れていた。