「うーん一杯買ったね!」

デパートから出ると、すでに日は落ち始めていた。来た時はまだ明るかったのにな。一体雛菊デパートに何時間いたんだろう?

「翔、重い。これ持って?」

そう言うと紫音は無理矢理俺の右腕に紫音が買った大量の服が入った紙袋を持たせて来た。

「買いすぎだろ…これ」

「女の子はお洒落には気を使うんだよ?きっと百合菜もね……」

百合菜ちゃんもお洒落……?

『翔君、これどうかな?翔君に見てほしくて買ったんだぁ。この服……』

可愛らしく上目使いで俺を見てくる百合菜。俺はたまらず抱きしめる。

『似合ってるよ、百合菜』

『えへへ……』

「えへへ……」

「翔……?あんた何考えてるの?」

「はっ…!」

気がつくと、紫音は凄く冷めた目で俺を蔑むように見ていた。

「いや、何でもないよ。それより、これ……」

「なぁに、これ?」

俺はポケットからピンク色の包みを取り出した。これは、さっきの店員さんに聞いて、こっそり紫音のために買ったものだ。

「いや、今日たくさん付き合ってもらったから……そのお礼にと思ってさ」

「わ、私に……?」

「他に誰がいるんだよ」

俺がそう言うと、紫音は確かにね、とばつが悪そうに頷いてから包みを受け取った。

喜んでくれるといいんだけどな……。