「紫音ちゃんとは結構話が合ってね。服を選んでいる間とかも色々話してたんだよ」

疑問に思ったけど、店員がそんなに客と話していていいのだろうか?まあ店長が何も言わないしいいんだろうな。

「それでね。ついうっかり紫音ちゃんに俺の好きな人をばらしちゃったんだよ

「好きな人…?」

「ほら、今あそこでレジ打ってる子だよ」

店員さんの指差した方向に視線を合わせる。

「……可愛いですね」

どっかの雑誌の読者モデルよりもずっと可愛いと俺は思った。

「だろ?それでさ。紫音ちゃんったら、それを知った途端に、くるみに色々話し掛けてさ……。たぶん、紫音ちゃんがいなかったら、くるみとは一生話せずに終わっていただろうな」

くるみってのはあそこの彼女のことだろうな。
しっかし、何でだろうな。俺は小さく笑った。渡にしろこの人にしろイケメンってのは意外と小心者なんだな。

その時、服の束を持った紫音がまた、ぱたぱたとこっちに走って来た。

「お待たせ。何の話してたの?」

「男同士の話さ」

俺と店員さんは顔を見合わせて笑った。紫音はそんな俺達を見て首を傾げていた。