家に着いたものの、何もする気が起きない。

俺は抜け殻のような状態だった。

紫音の奴、春先に突然現れたと思ったら……冬に突然いなくなりやがってよ…。

勝手なんだよ…お前は。

紫音…。お前は結構俺の中にいたんだな…。

俺が気付いてないだけだったんだな……。

いつから、俺のことを想っててくれてたんだよ?

俺が一人悲しみに耽っている時、不意に携帯が水色に点滅した。

水色は百合菜ちゃんの好きな色。俺は携帯を開き電話に出る。

「もしもし……」

「もしもし翔君?ねぇ今大丈夫かな……?」

俺は横目でチラッと時計を見る。14時を過ぎたばかりだった。

「大丈夫だよ?」

「じゃあ…さ。し…翔君の家に行ってもいいかな?」

俺は少し考えた。ただ俺は気付いていた。

電話越しの声が微かに震えていることに…。

「…迎えに行こうか?」

「ううん大丈夫。じゃあお邪魔するね?」

そこで電話は切れた。

俺は改めて思う。
……みんな、辛いんだ。