俺と雅也は重い足を引きずりながら帰っていた。

「しかし何だかね……学校に行く気がしないね」

雅也は遠くを見つめながら俺に言う。明日は、クリスマスにも関わらず学校は終業式を迎える。

紫音の最後を看取った俺らは学校に行くのが憂鬱でならない。

「紫音のこと考えちゃうな……」

「だよなぁ、いつの間にか……紫音はいて当たり前って感じだったもんな」

俺は最近を思い出す。大きなイベントには確実に顔を出していたと思われる。

「大切なものは失ってからじゃないと分からない…ってか?」

雅也は空を見上げながらポツリと漏らす。

「…紫音…」

俺の発した言葉は、白い息とともに白い空へと溶けていった。

「雪か……」

空からはしんしんと雪が降りて来ていた。

「なあ雅也、紫音さ。最期は幸せそうな顔してたよな…」

「……そうだな」

空からの雪が掌に一粒舞い降りた。それは軽くて潰れてしまいそうだった。