「ここにも紫音がいるんだよ…?」

百合菜の言葉に皆は驚いて辺りを見回す。

そんな皆の様子に俺は思わず吹き出した。

「翔先輩!!何がおかしいんですか?」

「違う違う!紫音っていうのはさ……」

俺は百合菜を見る。
百合菜は頷き、話す。

「ここだよ…」

百合菜はお腹をさすった

「え…?」

皆の目は点になった。

「もお七ヶ月でね。女の子なんだよ。だから……この子『紫音』って名前にしようと思ってさ」

「まぁこれもある意味紫音からの贈り物だよな?名前の由来は紫音だし。 From..紫音ってか?」

俺がそう言うのを聞かず、皆は俺を突き飛ばして百合菜のもとへ駆け寄る。

いててて……。ったく、少しは俺のことも大切に扱えよな。

……なぁ、紫音。

俺は、百合菜と産まれてくる紫音を命を懸けて守っていこうと思っている。

俺は腕に付けているブレスレットを見る。あの文化祭で取った物、紫音とお揃いだ。

「名付け親として、しっかり見守ってくれよ?」

俺は空に投げかけた。

『翔……頑張れ』

紫音…?俺は慌てて声のした方を見た。

そこにはただ青い空が広がるばかり。

そういえば……俺がラブレターを拾った日もこんな天気だったよなぁ…。

俺はその空に 誓う。

「紫音と百合菜を守る」

そう空に告げ、俺は百合菜の元へと駆け寄った。

外には、手紙が舞ってもおかしくないような、春一番が吹いていた。

  完