「やっぱり品揃えならここが一番だよね」

と言って紫音に連れられて来たのは雛菊デパートだ。確かにここなら、百合菜ちゃんからも認められるような服が見つかるかもな……。

『わぁ、翔君かっこいい!!』

『百合菜も可愛いよ』

『翔君、私と付き合っ…』

「……あんた鼻の下伸びきってるけど何考えてんの?」

紫音から軽蔑しきったような眼差しを向けられる俺。

「いや、何でもないよ」

「ふーん……。まあいいや。どうせ妄想でしょ?早く行こう。時間がもったいないよ」

……何か最近、妄想世界に入りっぱなしだな。さりげなく紫音に見抜かれていたので俺は少し反省した。

「ほら、行くよ?」

紫音は俺の手を取って、エスカレーターへと走り出した。久しぶりに触れた幼なじみの手の感触に、少しドキッとしたのは内緒だ。