季節は木枯らし吹き荒れる秋になっていた。

あの日……百合菜ちゃんとキスを交わして以来、二ヶ月の月日が過ぎたが全くの進展はない。

今では、あれは夢だったのではないかと思っているほどだ。

今日は10月24日。文化祭を一ヶ月後に控え佐久良高校は文化祭モード一色だ。

俺は クラスの話し合いに参加するまでもなくぼんやりと窓を眺めていた。

考えるのは決まってあの事だ。

差出人不明のラブレター……。確実に この学校の誰かなのに…。

答えがでない。

それが、もどかしくてたまらない。何かを忘れている気がする……。

「ねぇ。翔君もそれでいいよね?」

突然、司会を務めている百合菜ちゃんに話を振られたので俺はとっさに首を縦に動かした。

その瞬間、クラスから歓声が上がった。

な……何の騒ぎだ?

「見直したわよ翔。あんなめんどくさい役職を引き受けるなんて」

静香が驚いた目で俺を見る。俺は慌てて黒板の文字に視線を合わせた。

文化祭実行委員
若葉 翔

は…はめられた。こんな事をするのは一人しかいない。

「雅也ぁ!!」

「頷いたのは翔だろ?諦めてしっかり働け」

俺は自分の不注意さに腹がたち、反論することさえ忘れていた。

それにしても百合菜ちゃんを使うとは……。

ずるくないか?