ただいま20時。夜の砂浜にいるのは四人。俺、百合菜ちゃん、雅也、おじいちゃんだ。

告白シーンを撮る為にわざわざ出て来たのだ。

だが思いの外、撮影は難航していた。俺のせいである。

演技とはいえ好きな人に告白するのは緊張する。

結局、35テイク目でOKがでた。

「翔は駄目じゃのう。昨日の令志は一回で撮影を終えたんじゃがのう…」

「そうだぞ?令志は5分くらいで終えたのに、お前は……もう22時だぞ。早く寝ろよ?」

百合菜ちゃんも疲れ切った顔をしていた。雅也と おじいちゃんは機材を片付け別荘に戻っていった。

俺も帰るか…。皆には迷惑かけたな…

すると俺の服の裾を引っ張っている手の存在に気付いた。

「百合菜ちゃんどうしたの?早く帰ろう?」

「……少しお話したいな」

百合菜ちゃんの言葉に頷き俺は砂浜に腰を下ろす。それをみて百合菜ちゃんも俺のすぐ隣に腰を下ろした。

「静かだね……」

「うん……」

波の音以外何も聞こえない。昼はやかましい蝉達さえも声を出さない。

どのくらい沈黙が続いただろうか……。

突然、百合菜ちゃんは立ち上がった。

「私の好きな人はね…。いつも…いつでも他人のことを第一に考える人なんだよ…」

ドキン……。
俺の胸が騒ぐ。

「例え…私がその人に彼女が出来ても…私は多分その人以上に誰かを愛することは出来ない」

百合菜ちゃんの言葉に
俺はただ沈黙を貫いた。