「……翔君ごめん」

「別に早苗さんのせいじゃないですよ」

そう。悪いのは全部俺。きっと浅香さんには嫌われてしまっただろう。

「翔君。今からでも追い掛けなさい」

「もう無駄だよ。きっと浅香さんは俺のこと嫌いになったよ」

「何で百合菜ちゃんが来てくれたか分かる?」

そう言って早苗さんは百合菜ちゃんの置いていったバックから紙束を取り出した。

「宿題……?」

「そう……。きっと教えてあげようと思って来たんだよ?」

「何で……」

「きっと百合菜ちゃん。翔くんのこと……好きで好きでたまらないのよ」

「早苗さんに何でそんなこと分かるんですか?」

「現実から目を背けているのは翔君。そろそろ向き合いなさい。」

「うるさいな!早苗さん何かに俺の気持ちが分かってたまるかよ!」

パチン!渇いた音が居間に広がった。

俺は頬に熱い痛みを感じた。俺は早苗さんに平手打ちを喰らったのだ。

ただ…そんな痛みよりも早苗さんが泣いてることに対し心が締め付けられたような感じがした。

「分かるよ、痛いほど。気持ちってのは目に見えないよね。だから……ホントに信じていいのか迷う時もある。どうしようもなく辛い時もあるよ!だけどさ………」

そこで早苗さんは目の涙を拭う。

「自分に素直になろう?翔君は百合菜ちゃんが好きなんでしょ?だったら余計なこと考えないでぶつかろう?」

「それで駄目だったら…どうすればいいんですか…?俺…不安なんです。浅香さん…いや…百合菜ちゃんが離れてしまうんじゃないかって……」

「離さないように掴んでればいいじゃん。しがみついたっていい!どっかに行かないように…ずっと自分のそばにいるように…!!」

「早苗さん……」

俺は今まで胸にたまっていた しこりが取れたような気がした。

「俺…今から百合菜ちゃんに会ってきます」

早苗さんは俺の顔を見ると満足気に頷いた。

「うん。それでいい!」

早苗さんは軽く俺の頭を撫でて帰っていった。

早苗さんありがとう。俺は心のなかで御礼を告げた。