「すっかり料理冷めちゃいましたね?温めましょうか?」

俺はそう言って席を立った。

すると後ろから早苗さんはそっと俺を抱きしめた

「さ……早苗さん?」

「何でだろうね?」

「な…何がですか?」

背中に当たる柔らかい感触を気にしないようにするのに必死な俺は苦し紛れに答えた。

「別に顔もかっこよくないのに……さっきの翔君は、かっこいいって素直に思えたよ」

「気のせいですよ」

「それに…さっき翔君に褒められたとき……純粋に嬉しかったよ?これが“本当の幸せ”って奴なのかな?」

「そもそも幸せにホントも偽りもないんです。それが幸せっていうなら幸せ何でしょうね」

そう。幸せに偽りもホントもないんだ。

「ありがとう」

背中越しに早苗さんの声が聞こえて来た。

その声は…少し震えていた気がした。