「さ、早苗さん?」

「あ…ごめん…。何か変なこと言っちゃって…」

そう言って何事もなかったように明るく振る舞いシチューを口に運ぶ早苗さん。

だが、そのスプーンは小刻みに震えている。

「無理しないで下さい。そんな偽った笑顔を浮かべるのはやめて下さい」

「あなたに何が分かるのよ…」

早苗さん……。

「付き合って…!体の関係を拒否したらすぐ振られて…。誰も私を理解してくれようとしない!」

俺は早苗さんの抱える影を垣間見た気がした。

「だけど…私は…人間っていう生き物が好きで…だから…人を支える仕事に就こうと…」

早苗さんはポツリポツリと言葉を漏らしていく。

「でも…俺はそんな早苗さんが好きですよ?」

「…え?」

「初めは『可愛い人』っいう印象しか持ってませんでした。だけど今日勉強を教えてもらって…」

「翔君…?下手な同情はいらないよ…」

俺の言葉を遮り、涙を机に零す早苗さん。俺は続ける。

「俺は早苗さんは、『ドS』で『優しく』て『料理が上手い』と思いましたよ。だから今度皆に早苗さんを紹介するときは『可愛い早苗さん』じゃなくて、『ドSだけど優しくて料理が上手い早苗さん』って言うと思いますよ?」

「……そんな私を翔くんは嫌いになったりしないの?」

「そんな早苗さんだからこそ好きなんですよ。また勉強教えてください」

「……ばか」

早苗さんはそう言ってちょっとだけ笑ってくれた……。