「映画って言ったらキャストが大事だよね?」

浅香さんも口をはさんできた。体育祭以来、浅香さんは大分表情が柔らかくなって来ていた。

「まぁ大体の構想は出来ている。俺、翔、渡、美紀、静香、百合菜は当然参加として…後は如月、桜花、紫音にも声をかけてみる」

「紫音にも!?」

思わぬ名前の登場に俺は驚いた。

「絶対損はないから」

「でも……」

「いつかそう思える日が絶対にくるから……」

雅也はそう言うと悲しげに目を伏せた。俺がその雅也の言葉の意味を理解するのはずいぶん後のことになる。

「ま、桜花なら翔が来いったら絶対来るよな」

「桜花、翔さんにメロメロですからね……」

渡の言葉に何故か美紀がため息をつく。

「あんた、桜花に手ェ出したら許さないからね……」

「は……はいっ!」

静香の身が凍り付くようなドスを効かせた声に俺は頷くしかなかった。