俺は若葉 翔が嫌いだった。俺が若葉 翔に抱いていたイメージは…“偽善者”その一言に尽きる。

風の便りで聞いた奴の
お人よし伝。

“転校生に絆創膏を渡し他上、道案内もした”

“一本しかない傘を知らない人に渡して自分は濡れて帰ろうとした”

“落としてないコンタクトを二時間探し続けた”

馬鹿らしい…。俺はそんな伝説を影で嘲笑っていた。

だが…そんな奴に百合菜は惹かれていた。

奴と出会う前から俺は百合菜のことが好きだった。

翔のことを話すときの百合菜の顔はホントに嬉しそうだった。

……昔も今も。

「よーいドン!!」

俺達の行動にいち早く感づいた雅也の合図で俺達は同時に走り出した。