翔先輩は私の答えを聞くとゴールテープの方へと足を向け、走っていった
私は分かっていた。翔先輩…凄く悔しがっていた。

それを決して表に見せない隠れた優しさ…。

それこそが私が翔先輩を好きになった理由…。

始業式の日に、翔先輩は、ぶつかった転校生に絆創膏をあげた上に、道案内もしてあげていた。

私は その現場を隠れてみていた。

そして、その日から一ヶ月。

私がお腹が痛くて早退した日には、偶然翔先輩を見かけた。

紫音って子と仲良く話していた。それを見て、私の中に複雑な気持ちが浮かんだ。

その気持ちが“嫉妬”だと分かるのに私は時間を有した。

私は見てられなくなり、急いでその場を逃げ出した。その時に物音がしてしまったのだ。

翔先輩の優しさを独り占めにしたい。

そんな気持ちから私はラブレターを書いたのだった。

私の気持ちは翔先輩には届かなかった。

だけど…翔先輩は私と仲良くしてくれている。

「ホントに優しいんだから……」

私は一人呟き、しばらくそこに佇んでいた。