アンカーは200メートルを走る。

俺は走りながら今までの特訓の日々を思い返していた。

『いい?まず翔は走るフォームが悪いの!』

今、俺はその紫音直伝のフォームで走ってる。

右足は、テーピングと痛み止めの薬のおかげで今はそれほど痛くない。

『気持ちで負けちゃダメよ?』

ゴールテープまで残り100メートル

令志が迫って来ていた。令志は本当に速い。だが…。

“勝ちたい”

その気持ちなら負けない。 俺が……俺がこの差を守り切ればB組は勝てるんだ。

「翔!」
「翔さん!」
「翔くん!」
「若葉!」
「若葉くん!」

クラスの面々の声援が俺の背中を押してくれる。

残り50メートル。俺は次第に令志が近づいていることを地面を蹴る音が迫っていることで悟った。

『最後の最後は…やっぱり翔らしく走る!!』

ゴールは目前だ。
残り25メートル。

俺はチラリと令志の位置を確認した。

…いける。俺は小さくガッツポーズを取った。

クラスの皆が作ってくれた差を守り切れる。俺はそう思った。

しかし、その時俺の視線は、とあるものを捉えていたのだ。

桜花?

そう、皆が皆、このリレーに釘付けになっていたのが仇になった。

桜花は他校生に囲まれている。

どうみても良い雰囲気では無い。

どうしてあんな所に一人でいたのか?

他校生は桜花の制服に手をかけた。

まずい!
だけど…。残り10メートルとなり…目の前にはゴールテープが迫っていた。

令志からは充分逃げ切れる距離だった。

B組全員が期待の目で俺を見ていた。

俺は……。