「どうだ？愛妻からの弁当は？」

雅也のニヤケに俺は素っ気なく返した。

「愛妻じゃないから。弁当は普通においしいけどさ。何で俺に作ってくれたのかな？」

「何でだと思う？」

質問を質問で返された。
俺は、ない知恵を絞って考え、ある答えを導いた。

「令志のを作ってて、余っちゃったから？」

その答えに雅也は、やれやれと言わんばかりにため息をつく。

「だいたい！お前、令志と百合菜は……」

「翔先輩！何の話してるんですか？」

雅也の話を遮って、会話に入って来たのは桜花だ。

「別に。何でもないよ。桜花こそ何の用？」

桜花は、俺の言葉を聞くと後ろに回してあった腕を前にだした。

その腕の中には風呂敷包みがあった。

「翔先輩の為にお弁当作ってきました！」

「ごめん。俺もうお腹いっぱいなんだ…」

すると桜花の大きい目がうるうると潤み始めた。

「私のは食べてくれないんですか…？」

涙目に加え上目使いで俺を見つめる桜花。

「分かった分かった！食べるよ！」

「どうぞ召し上がれ♪」

もはや味わうというより掻き込む形で胃の中に食べ物を入れていく俺を、雅也は同情の眼差しで見つめていた。