俺は足を引きずりながら雅也の元へと向かった。

「あいつ…相当速い」

俺が口を開く前に雅也が口を開いた。

「翔、右足怪我してるんだろ?そんな調子で大丈夫なのかよ?」

「駄目かもしれない」

「そんな弱気じゃ如月には勝てな……」

「右足何か知るかよ。俺はB組のために走るだけだよ」

俺のその言葉を聞くと、雅也は一瞬驚いたような顔を浮かべたがすぐにフッと鼻で笑った。

「百合菜の為の間違いだろ?」

「ばっ……違ぇよ!俺は令志に勝とうと……」

「無茶すんなよ」

きっと、雅也は俺の気持ちに気付いてるんだろう。

「……サンキュ」

「とりあえず弁当食おうぜ。腹が減っては戦は出来ぬだろ?」

雅也はそう言って鞄から弁当を出した。

俺は気付いた。

「弁当忘れた!!」

「はあ?」

雅也は信じられないと言いたそうに俺を見る。

「今日、日曜じゃんか!だから親は弁当作ってくれてないんだよ!だから買うはずだったのに……」

そう言って雅也をチラリと見ると雅也はにやにや笑っている。

「笑いたきゃ笑え」

「そういやこれ預かってたの忘れてたわ」

そう言って雅也が取り出したのは弁当箱。

「お…俺に?誰から?」

「よく見りゃ分かるよ」

そう言うと雅也は俺に弁当箱を差し出した。俺はそれを受け取った。

そして俺は驚いた。

「たぶん。あいつ待ってるぜ?おまえの気持ちを聞くの」

雅也の言葉も耳に入らない。

俺は 弁当箱に添えてあった百合の花をただ…食い入るように見つめていた。