残り100メートル。足に鈍く痛みが走る。

後ろを気にするとC組が迫って来ていた。

雅也に繋ぐ…。

その一心で俺は足をがむしゃらに動かしていた。

残り50メートル。

「翔頑張れ!」
「翔さん!あと少し!」

美紀と渡が精一杯俺に声援を送る。それだけじゃなかった。

「翔!頑張れ!」
「若葉!その調子!」

B組皆が俺に声援を送ってくれる。一年前の俺には考えられなかった状況だ。

今思えば……美紀が来てから俺は変わった。

別に美紀が何をした訳ではない。

あの時美紀とぶつかったから、皆に美紀との関係をしつこく問われ、クラスで少し話すようになった。

美紀がいたから、つまらなかった学校が楽しくなった。

そして何より…、
美紀が来たから、浅香さんへの気持ちを俺は確認できた。

美紀に惹かれなかったのは…浅香さんがいたから。

そんな気持ちを俺に教えてくれた藤堂 美紀。

最高の友達だ。

そして…
その美紀の為にも、
クラスの為にも、

負けるわけにはいかない
残り10メートル。

俺は残った気力を振り絞り最高の親友の名を叫ぶ

「雅也!!」

「翔!」

雅也は俺を庇ってからかバトンゾーンの一番後ろの線まで来てくれた。

「頼んだ!」

雅也の右手にバトンを渡して、俺はその場に倒れ込んだ。