…速い。美紀は 四人のランナーの中で一番速かった。

唯一C組の女子が食らいついて、A組、D組には大差を付けていた。

その差を保ったまま美紀は渡にバトンを渡した。

渡はクラスの中では雅也に次いで足が速い。しかし、渡のバトンを受けるのは俺だ。

俺は高鳴る鼓動を抑えることが出来なかった。もうすぐ渡が俺にバトンを届けに来る。

あと100メートル……。

渡は、美紀が稼いだリードを守りつつ、少しずつ 差を広げていた。

もはやB組とC組の直接対決に変わりつつある。

「翔!」

渡の声が聞こえて来た。
俺は右手を後ろにかざし 渡のバトンを受け取った。

「頼んだぞ」

前に駆け抜ける渡の声を聞きつつ、俺は走り出した。