「また令志のこと?」

俺は、我ながら意地悪な笑みを浮かべて聞いてみた。

すると浅香さんは、笑顔を保ったまま、俺の左足を思い切り蹴飛ばした。

「つっ…!!」

痛みが電流となり骨を伝って駆け抜ける。

「翔君のことだよ?怪我…してるよね?」

「し…してないです」

怪我してることが分かったら皆に迷惑をかけてしまう。俺は隠し通そうと固く決心した。

「翔君。もう一回蹴飛ばそうか?」

ニコリと笑った浅香さんだが目は笑っていない。

「軽い捻挫だよ」

殺られる…。俺は生命の危機を察知し固い決心を早くも破る。

「その足じゃリレー無理だね。皆に伝えとくよ」

「ダメだ!」

「……何でリレーにそこまでこだわるの?」

次第に浅香さんの目が潤んで来た。

「……別に」

本当の理由はある。やっぱり俺は、浅香さん……いや、百合菜のことが好きなんだ。

俺はかっこよくもないし頭も普通、運動も普通。
令志には何一つ敵わない
それが悔しかった。

だけど スゴスゴと引き下がっては負け犬だ。

やらないで後悔するなら やって後悔したほうがマシだ。

俺はその思いからリレーのアンカーに立候補したのだ。