2123年。21世紀に入ってからどんどん工業が発展していったらしい日本は、22世紀になってからさらに加速。10年ほど前に産業革命が起きて、街は見渡す限り灰色になった。幼い頃遊んだ公園も、休みに家族と行ったショッピングモールも、跡形もなく消え去り、工場ばかりが建てられた。工場で働くのは人工知能のアンドロイドたち。街中を歩いている人は滅多に見かけない。娯楽といえばゲームか、県に1つあるかどうかの遊園地、そしてここ、学校での生活だけ。すべての情報がデータでやり取りされ、紙を使っているのなんて学校くらいのものだ。教育制度は僕が小学校に上がる前に改革された。今は9年生の小等中等学校と7年生の高等大学校、2つにしか通わない(安易なネーミングセンスだ)。よって学校の数は減り、廃校になった学校も工場になった。僕たちにとって学校はオアシスだった。図書室には外では絶対に得られない紙製の本がある。家族以外の人間にたくさん会える。そしてなにより、運動する場所がないこの世の中で体育の授業が僕たちはとても楽しみだった。もっとも、週の半分ほどは黒い雨が降る中外で体育をやるのは厳しいものがあるため、ほとんどが体育館での競技だったが。生物種も大幅に減った。ほとんどの魚や昆虫が絶滅の危機に瀕した。幼い頃はよく虫取りをしたものだが、今や昆虫の姿はほとんど目にしない。技術だらけの世界だ。工場から生み出される煙は空を覆い隠し、ほとんど毎日曇っていた。それでも僕は屋上が好きだった。何故だかは分からないけど、安心するのだ。月に1.2回は何故だか綺麗に晴れることもあり、その日を待つのも楽しみだった。