「高島優香ちゃん、第3診察室へお入りください。」

正直病院は嫌い。

この鼻に付く消毒液のにおい。入院している時でも一度も慣れたことはなかった。


診察室の扉を開ける。それはより重く感じる。


『優香おはよう。』


「おはよう…。はぁ…。」


消え入りそうな声で挨拶を交わす。思わず溜息が漏れる。

『優香どうしたの?具合悪い?』

悪くなかったらこんなとこ来てない。という言葉は言えるわけもないけれど。


『言わなきゃわかんない。』


言ってもわからないくせに。私の気持ちなんて。


「……。」


『なんか言わないと診察始められない。』


涙が自然と出てしまう。
猫は飼えないよ。と言われるのが目に見えてる。単なる我が儘なんだけれど。


はなが飼いたい。病気のはなと一緒に生きていきたい。


今日はそれを先生に伝えるために来たんだから。



『優香、大丈夫?どこか痛い?』


私は首を振る。


息が苦しい。咳が出る。


泣くことより先に発作が出るのだ。
いつの間にか私は胸元を強く握っていた。
なんて迷惑なんだろう。わたし。


情けなくなる。




『ゆうか、ゆっくり息して。手は離すよ。』



『その調子でね。宮本さん薬持って来てもらえる?』


少しずつ落ち着いてくる。懸命に呼吸をコントロールする。


「先生、ごめんなさい。」