ゆうか。



山瀬先生の声が聞こえた気がして、目を開ける。



胸の痛みも苦しさもなくなっていた。



代わりに右手に点滴がしてある。



『ゆうか、夕食まで時間あるから外行こうか。今日は暖かいよ。』



そんなこと言わないで。



そんな顔で。



『どうして?先生お仕事大丈夫なの?』



『これも立派な仕事です。』



そっか、これも仕事か。それ以上も以下もない。



『一瞬寂しそうな顔したね。そういえばゆうかは俺の彼女としてはまだ早い。だから撤回する。』


やっぱりそうだ。



私は夢を見てただけなんだ。



『ゆうかの病気が治って、卒業するまで、そっとすることにするよ。』



『そっとするって?』



『そのまんまの意味だけど。』



幻は現実にはならない。
そう確信した瞬間だった。



『わかった。』



納得するしかない。