「なあ、咲。光ってやつ知ってるか」
突然言われたそれに私は思わず肩をすくませた。
隣の問いかけてきた男子を見る。何も裏はなさそうだ。
まあ、この学校に光のことを知っている奴がいるとも思えない。
「きら……じゃなかった。光? 知らないけど。なんかあったの?」
私がそう問いに問で返すとその男子は困ったように頭をかいてから、いや……と渋り始めた。
へえ、長野が珍しい。なんて思いながら隣を見る。
人の口に戸は立てられないとよく言うがこの長野には板すらたてられないのではないかというほど口が緩いのだ。
だが珍しいのは一瞬だけだったようですぎにまあいいかと開き直ってこっちを向いてきた。
少し堀の深いその目元を細く伸ばし白い歯を屈託もなく見せる。
朝教室につき席に着こうとした途端このテンションだ。
私とは違って朝から元気でうらやましい。
「まあ咲は口が堅いから大丈夫だろ言っても」
いや秘密だったとしたら長野なんかにそれを教えることはないだろ。
なんて心の中で突っ込みを入れつつ長野のその先を聞く。
「今日その光ってやつが転入してくるらしいぞ」
えっと長野のその言葉に思わず声をあげそうになったがぎりぎりでこらえ切れた。
光。そんな名前なんざ全国にごまんといることだろう。
それに今までこんなにもあってきていなかったのにあのことを思い出した直後に会うことになるなんてことはありえない、いくら何でも出来過ぎだ。
「おい咲どうしたよ。ぼけーとしちまってさ」
不安そうに伺ってくる長野に気が付いて私は反射的に何もと返す。
あまりに反射的過ぎて逆におかしかったかと心配になったが長野にはそこは気になっていなかったようだ。
こんな時改めて長野が能天気でよかったと思える。
「んで、このクラスに今日転校してくるらしいからどんな奴かと思ったけど、まあ何も聞いてねえよな」
聞くも何もそんなこと自体が初耳でしたから。
でも、なんて続けて私は椅子に身を預ける。時計はもうすぐホームルームの時間をまじかに指していた。
「でもこんな時期に転校なんて大変だよね、もうすぐ夏休みじゃん。やっと友達と遊べると思ったらまったく知らない人たちに囲まれるだなんて私は無理だわ」
「そうか? でもまあ俺は咲みたいなやつがいるんなら転校してもいいんだけどな」
「うわ、ちゃらいな」
笑いながら私がそういうと長野も笑い返しながらまあななんて言った。
時々こいつの本気とうそが分からなくなる。まあ、そういうところが親しみやすいってことで人気あるんだろうけど。
「でも、朝から女子がうるさくてこっちはこっちで大変なんだよ」
そういう彼は教室の隅でうるさいぐらいに騒ぐ女子集団に視線を少し送ると大仰にため息を吐いた。
「まあ、女子はそういうことに騒ぐ生き物だから仕方ないっての」
私も長野が向けた女子グループと同じところを見ながら半ばあきらめたように言う。
ただ今回はいつもより少しうるさいと私でも思ってしまった。
イケメンやらなんやらで盛り上がっているらしいけれど、今の時代こんな普通の高校でイケメンに出会うことなんて早々ありえないんだから変な妄想なんてやめておけばいいのに。
「咲はなんではしゃがないのかねえ」
問いかけられ長野のほうを見るとにやにやとからかうように肘をついて私のほうを見ていた。
「知らねえ」
ふてくされて長野とは違う方向を向くと彼に火をつけてしまったのかあっと大きな声を出しながら何かを思いついたかのように言う。
「あれだ、咲は女子じゃないっていう可能性が」
「これでも女子だっつの」
勢いよく彼の頭に手刀を下すと難なくさけられてしまった。
それに頬を膨らませながらしぶしぶ椅子に座りなおす。
「うそだっての、うそ。咲はれっきとした女子だって」
「今更そんなこと言われても何にも心に響かないんですが」
なんて言いながら二人でお互いの顔を見合う。
いつの間にか長野の肩が揺れた。
ぷっとしたい気が漏れ聞こえる。
長野の顔が笑みでゆがんだ。
つられて私も吹き出してしまう。
いつの間にか二人で馬鹿笑いしていた。
どこかでまたやってるよあいつらなんて声が聞こえてくる。
「ったくまたあんたのせいで私がからかわれてるじゃんか」
笑いながら拳を作り彼の顔面向けて飛ばすも笑ってるせいかこれまたなんなくかわされる。
「何言ってんだ、俺がからかわれてるんだっての」
彼のでこピンが私のおでこに命中してくる。
よける間もなくその節の目立つ指が開かれおでこに軽い痛みが走った。
それでもなお、いやそれがより引き金を引き余計笑いだす。
これじゃあ、角にいる女子どもと変わらないだろうに。
なんて思うがこれでいいのだ。私たちは学生なんだもの、これぐらい馬鹿笑いしたっていいじゃないか。
突然言われたそれに私は思わず肩をすくませた。
隣の問いかけてきた男子を見る。何も裏はなさそうだ。
まあ、この学校に光のことを知っている奴がいるとも思えない。
「きら……じゃなかった。光? 知らないけど。なんかあったの?」
私がそう問いに問で返すとその男子は困ったように頭をかいてから、いや……と渋り始めた。
へえ、長野が珍しい。なんて思いながら隣を見る。
人の口に戸は立てられないとよく言うがこの長野には板すらたてられないのではないかというほど口が緩いのだ。
だが珍しいのは一瞬だけだったようですぎにまあいいかと開き直ってこっちを向いてきた。
少し堀の深いその目元を細く伸ばし白い歯を屈託もなく見せる。
朝教室につき席に着こうとした途端このテンションだ。
私とは違って朝から元気でうらやましい。
「まあ咲は口が堅いから大丈夫だろ言っても」
いや秘密だったとしたら長野なんかにそれを教えることはないだろ。
なんて心の中で突っ込みを入れつつ長野のその先を聞く。
「今日その光ってやつが転入してくるらしいぞ」
えっと長野のその言葉に思わず声をあげそうになったがぎりぎりでこらえ切れた。
光。そんな名前なんざ全国にごまんといることだろう。
それに今までこんなにもあってきていなかったのにあのことを思い出した直後に会うことになるなんてことはありえない、いくら何でも出来過ぎだ。
「おい咲どうしたよ。ぼけーとしちまってさ」
不安そうに伺ってくる長野に気が付いて私は反射的に何もと返す。
あまりに反射的過ぎて逆におかしかったかと心配になったが長野にはそこは気になっていなかったようだ。
こんな時改めて長野が能天気でよかったと思える。
「んで、このクラスに今日転校してくるらしいからどんな奴かと思ったけど、まあ何も聞いてねえよな」
聞くも何もそんなこと自体が初耳でしたから。
でも、なんて続けて私は椅子に身を預ける。時計はもうすぐホームルームの時間をまじかに指していた。
「でもこんな時期に転校なんて大変だよね、もうすぐ夏休みじゃん。やっと友達と遊べると思ったらまったく知らない人たちに囲まれるだなんて私は無理だわ」
「そうか? でもまあ俺は咲みたいなやつがいるんなら転校してもいいんだけどな」
「うわ、ちゃらいな」
笑いながら私がそういうと長野も笑い返しながらまあななんて言った。
時々こいつの本気とうそが分からなくなる。まあ、そういうところが親しみやすいってことで人気あるんだろうけど。
「でも、朝から女子がうるさくてこっちはこっちで大変なんだよ」
そういう彼は教室の隅でうるさいぐらいに騒ぐ女子集団に視線を少し送ると大仰にため息を吐いた。
「まあ、女子はそういうことに騒ぐ生き物だから仕方ないっての」
私も長野が向けた女子グループと同じところを見ながら半ばあきらめたように言う。
ただ今回はいつもより少しうるさいと私でも思ってしまった。
イケメンやらなんやらで盛り上がっているらしいけれど、今の時代こんな普通の高校でイケメンに出会うことなんて早々ありえないんだから変な妄想なんてやめておけばいいのに。
「咲はなんではしゃがないのかねえ」
問いかけられ長野のほうを見るとにやにやとからかうように肘をついて私のほうを見ていた。
「知らねえ」
ふてくされて長野とは違う方向を向くと彼に火をつけてしまったのかあっと大きな声を出しながら何かを思いついたかのように言う。
「あれだ、咲は女子じゃないっていう可能性が」
「これでも女子だっつの」
勢いよく彼の頭に手刀を下すと難なくさけられてしまった。
それに頬を膨らませながらしぶしぶ椅子に座りなおす。
「うそだっての、うそ。咲はれっきとした女子だって」
「今更そんなこと言われても何にも心に響かないんですが」
なんて言いながら二人でお互いの顔を見合う。
いつの間にか長野の肩が揺れた。
ぷっとしたい気が漏れ聞こえる。
長野の顔が笑みでゆがんだ。
つられて私も吹き出してしまう。
いつの間にか二人で馬鹿笑いしていた。
どこかでまたやってるよあいつらなんて声が聞こえてくる。
「ったくまたあんたのせいで私がからかわれてるじゃんか」
笑いながら拳を作り彼の顔面向けて飛ばすも笑ってるせいかこれまたなんなくかわされる。
「何言ってんだ、俺がからかわれてるんだっての」
彼のでこピンが私のおでこに命中してくる。
よける間もなくその節の目立つ指が開かれおでこに軽い痛みが走った。
それでもなお、いやそれがより引き金を引き余計笑いだす。
これじゃあ、角にいる女子どもと変わらないだろうに。
なんて思うがこれでいいのだ。私たちは学生なんだもの、これぐらい馬鹿笑いしたっていいじゃないか。