華奢な菜花は思った以上に足が速く、なかなか追い付かない。


けど、それでも昇降口まで来たところでやっと追い付いた。



ーーガシッ



「ま、待てよ……っ!はぁはぁ」



うわ、マジ全力疾走しちまった。


久々に全力で疲れたし。


でも、お前のためなら痛くも痒くもねーよ。


腕を掴んだ瞬間、菜花の体が大きくビクンと跳ねた。



「な、なんで逃げんだよ?」



「…………」



ほんのりピンク色に染まる頬が、ちょっと乱れた栗色の髪の毛が、小さな肩を震わせて呼吸を整える姿がーー。


俺の目に眩しく映る。



「だ、だって……琉衣が恥ずかしいこと言うから」



しどろもどろになりながら、視線をあちこちに彷徨わせる菜花。



あー、こいつ……照れてんだ。