確か洋平は就活中って言ってた気がするけど、まさか大学進学を決めたなんて知らなかった。


いや、洋平なら大学受験は難なく突破できるとは思うんだけど。

やっぱり気になるのは生活費や学費のことで、頑張ればやれないこともないけど、それはそれで相当苦労すると思う。

覚悟がなければ出来ない選択肢だ。


しっかり者の洋平はよく考えて就職って決めたはず。そんな彼が進路を変更したそれなりの理由は一体何なんだろう。



「ね、聞いてもいい?」

「ん?」

「どうして急に大学進学に進路を変えたの?」



ポケットに入れた私の進路調査票。

私と同じ悩みを持つ洋平の決断に、何処か期待してる自分がいる。

洋平の話を聞いたら、私も答えが見出せるかもしれない。

心臓が忙しなく動く。


洋平は私の問いにふっと柔らかな笑みを浮かべた。



「諦める人生はもうやめようって決めたんだ」

「諦める人生…?」

「今まで、俺は何度も何度も色んな場面で色んなことを諦めてきた。でもさ、俺らと他の奴らの違いって何?親がいるかいないかってことだけだろ。俺自身、他の奴らと何ら変わらない一人の人間なのに、何で未来まで諦めなきゃいけないんだよ。俺らは何も悪いことしてない。色んな状況はあるにせよ、自分の運命を受け止めながら必死に生きてるだけだ」



洋平の言ってること、凄くよくわかる。

私も沢山のことを諦めてきた。
私自身はその辺を歩いてる人達と何ら変わらない普通の人間なのに、親がいないだけで世間の対応が180度違う。

好きで親がいないわけじゃない。
一人ぼっちの生活を私が選んだわけじゃない。

なのに、それだけで私達は窮屈で苦しくて辛い人生を送っている。



「最初は先に死んだ親を恨んだりもした。同情の目で見る周囲の人間も、自分の運命さえも呪った。でもさ、気付いたんだよ。そんなの自分の気持ち次第で変わるんだ」