私が彼らによって連れてこられたのは新選組屯所だ。
(「ここが新選組屯所……」)
まさかリアルで現実に見るなんて思ってもみなかった。
誠の旗が思わず胸に突き刺さる。
それでも私はただ、無表情でいた。
先ほどの笑顔は全て演技。
私には笑えない。
テレビで見る芸能人みたいに、笑うことなんて出来ない。
「総司、土方副長たちを呼んでくる。お前はこの女を見張ってろ」
「わかりました」
斎藤さんは私をちらりと見ると、中に入っていく。
屯所に来るまでほとんど無言だったが一応自己紹介だけされた。
やはり私の推測通りの人たちだった。
沖田さんに斎藤さん。
歴史で習った偉人人物に出会えるとは思いもしなかった。
教科書を読んで何となく、どんな人物たちだったのだろうとは考えていたけれど。
詳しいことまでは知らないからこんな時不便だ。
たとえば、密かに私を監視しているもう一人の存在が誰かとか。
物心着いた時からそういう気配を読み取れていた私は、すぐに分かる。
見られている。
それが色んな意味で、気持ち悪く感じた。
殺されるのは問題ない。
ただ、見られるのはあまり好まない。
これから殺されるかもしれないって時に、私は呑気にそんなことを考えていた。
その私をジッと見つめてくる沖田さん。
沖田さんの視線に気づいた私は、なんです?と尋ねる。