海が大好きだった私が、

もう二度と海には行かないと、

心に決めたのは、

私が小学校4年生だったときに

あの事件が起きてしまった

ときから。






私は友だちの未来ちゃんと、

二人で海に出かけ、

砂浜で遊んでいたが、

砂浜で遊ぶことに飽きた私は、

広くて、果てしない

海を見つめながら、

未来ちゃんにこう言った。






「未来ちゃん、海で泳ごうよ。




その方が、砂浜にいるより

ずっと楽しいよ」






「でも陽子ちゃん、

海は怖いよ。




毎年、溺れる人も出てるし」






「平気よ、未来ちゃん。




そんなこと、

滅多に起きることでもないし」






「でも陽子ちゃん、

私、海で泳いでいたら、

お母さんに叱られるわ」






「未来ちゃん、大丈夫よ。




今日のことは、

二人だけの秘密にしましょう。




誰にもわかりはしないわ。




私たちさえ、

誰にも何も言わなければ……」