〈 久保志織……。

どうしてあなたは、

そんなに私のことが憎いの?






あなたが死ななくては

ならなかったことと、

私が恵まれていたことは、

全くの無関係よ。






私が幸せでも、不幸せでも、

きっとあなたは死んだのよ 〉






私は心の中でそう叫んだが、

久保志織はおかまいなしに

ゆっくりと私に近づいてきた。






久保志織は血走った目を

私に向けると、

憎しみを込めて

私にこう言った。






「一条美和子……。

もう、受験勉強なんて

よしなさい!」






久保志織がそう叫ぶと、

私の机の上にあった

参考書やノートが

突然、飛び上がり、

宙を舞って床に散らばった。






私はそのありえない様子を見て、

ありったけの声で、

再び悲鳴を上げた。






私は逃げ場所がないかを

もう一度、

周りを見て確かめたが、

この部屋から抜け出せる場所は、

入り口のドアと大きめの窓のほか

どこにもなかった。






でも、入り口にはたどり着ける

見込みもなく、

大きめの窓から一階の庭までは、

およそ五メートルの高さがあり、

窓の真下は、

コンクリートで固めてあった。






私は絶望を感じながら、

久保志織の顔を見つめていた。