私はもう、

学校にいることが恐ろしくて、

今読んだばかりの手紙を

昇降口に投げ捨てると、

下駄箱の靴に手を伸ばした。






もしこの手紙に

書かれていることが、

本当ならば、

久保志織という女性は、

この世の中に

存在しないということになる。






久保志織という女性は、

大学に進学し、

医者になりたかった高校生。






彼女と彼女の両親は、

借金を苦にして

自殺している。






〈 そんなバカな話はないわ 〉






私は膝をカタカタと

震わせながら思った。






〈 だって、

死んでしまった高校生が、

私に手紙をよこすわけが

ないじゃない 〉






私が泣きそうになりながら、

慌て靴を履いたそのとき、

私は背後から強い視線を感じて

振り返った。






そして私は、悲鳴を上げて、

ヨロヨロと後ずさり、

下駄箱にもたれかかった。