私は父が経営する建設会社が、

多額の借金を抱えていることを

知りませんでした。






私の父は

真面目な性格だったので、

私たち家族に

心配をさせたくなかったのだと

思います。








父の会社の借金が、

私と母にもわかった頃には、

父の会社は手遅れでした。






父は従業員の給料を払うために、

怪しげな金融業者からも

金を借りていたのです。






そのときになって、

私は初めて知りました。






私は大学に進学するどころか、

普通に生活することも叶わない、

みじめな女の子に

成り下がっていたことを。






父はそのことを知っていながら、

私に何も言わなかった。






私が毎日、頑張って

机に向かっていたあの時間は、

初めから、報われることのない

無意味な時間だったのです。